任意後見契約を活用した不動産売却の成功事例
状況
【相談の背景】
Aさん(80代・男性)は、アパート等の収益物件を所有しており、意思能力がしっかりしているうちに
自身の財産管理について準備をしたいと考え、認知機能の低下が進み不動産の管理ができなくなった時
に備えて、長女との間で任意後見契約を締結しておきたいと相談がありました。
同居している長女Bさんが将来法的に財産管理を行えるよう、Bさんを「任意後見人」とする任意後見
契約を公証役場で締結しました。
【判断能力の低下と後見の開始】
数年後、Aさんの認知症が進行し財産管理が困難になったため、Bさんは家庭裁判所に対して「任意後
見監督人の選任」を申し立てました。裁判所が後見監督人を選任したことで、Bさんの任意後見人とし
ての権限が正式に発動しました。
Aさんは、自身の介護施設の入所費用が必要となったときに、自身が所有するアパートを売却し、介護
施設の入居資金に充てたいと希望していましたが、すでに契約内容を十分に理解する能力が低下してお
り、売却の意思表示が難しい状況でした。そのためBさんが任意後見人として売却手続きを代行するこ
ととなりました。
当事務所からの提案&お手伝い
【不動産売却の手続き】
BさんはAさんの財産管理を適切に行うため、任意後見監督人と相談しながら不動産売却に向けて以下
の手続きを進めました。
不動産査定の実施
▶複数の不動産業者に査定を依頼し、適正な売却価格を把握しました。
買主の選定と売買契約の締結
▶不動産会社を通じて適切な買主を選定し、売買契約を締結しました。
売却代金の管理
▶売却代金はAさんの口座に振り込まれ、その資金を介護施設の入居費用や生活費として適切に管理し
ました。
結果
Bさんの迅速な対応により、Aさんは希望していた介護施設にスムーズに入居することができました。
また、不動産売却によって得た資金を計画的に運用することで、経済的な不安なく生活を続けること
が可能となりました。
このケースでは、判断能力が低下する前に任意後見契約を締結していたことが大きなポイントとなり
ました。もしAさんが何の準備もしていなかった場合、法定後見制度の利用が必要になり、手続きが
長引く可能性があったため、任意後見契約の重要性が再認識される事例となりました。